冬うらら2

 気づけば、この有様だ。

 余りのことに、涙も吹っ飛んでしまった。

 彼がさっき言ってくれた、言葉への感慨どころではない。

 まるで、いまにも食べられてしまいそうな気配なのだ。

 いやなワケじゃない。

 ただ、いつもカイトの瞳は熱くて強すぎて、彼女の予想をいつも上回る。

 しかも。

 今日は、いつもの一日とは違うのだ。

 彼は乱れたタキシードで。

 メイは、ファスナーが途中で放り出されたままのドレスで。

 そんな姿の2人が、ベッドにいるのだ。

 平静な態度で、向かい合えるハズがなかった。

「あ……」

 ベッドの端からはみだした、ドレスの裾が掴まれた。

 これからのことを、予感させるようなその強い動きに、メイはますます胸を高鳴らせて。


 ダメ―― なんて、言えるはずもなかった。
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