冬うらら2

 なっ、なにー!?

 かなり核心をつかれた内容ではあった。

 それを、ソウマなんかに聞かれたら、きっと「イヤに決まってんだろー!」と即答するようなことである。

 しかし、言ったのはメイだ。

 そして―― カイトは答えなければならなかった。

 イヤな汗が、背中を流れた。

「そういうの、嫌いでしょう? 打ち合わせの間、ずっと口きいてくれなかったし……無理しないで。式…挙げなくても、大丈夫だから」

 ねっ?

 身体中のあちこちから、全部かき集めてきたみたいな笑顔を浮かべて、カイトにとって忌まわしいこの話を、ナシにしようとする。

 いつもならば、きっとその笑顔にはズガンと打ち抜かれるのだが、今回ばかりはショックが大きかった。

 まさか、彼女がこんなことを言い出すとは、思ってもみなかったせいだ。

 口をきかなかったのは、式のせいじゃない。

 ソウマたちがいたからだ。

 本当は、今日の午後は二人きりで。

 そりゃあ、得意ではないかもしれないけれども、わずかの言葉くらいは彼だって何とかひねり出したかもしれないのに。

 確かに、式はイヤだ。

 自分の価値観からいけば、とんでもない話である。

 でも。

「式は、やる」

 はっきり―― 言った。

 その言葉が信じられなかったのだろう。

 手放しにびっくりした顔になった。

「式は挙げる…何だって誓ってやるし、今からメシも食いに行く」

 ぷいと、顔をそむけそうになるが、ぐっとそれを押さえる。

 そうして、彼女をじっと見つめながら、はっきりした口調でそれを突きつけた。

 これが、彼の決意だったからだ。

 いや、結婚式と夕食を同列で並べてしまうところが、甘いささやきにはほど遠かったけれども。
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