冬うらら2
○
ハルコはまだ、副社長の側で話している。
そろそろ、帰ろうかしら。
約束の時間は、7時だった。
この店の前まで、迎えに来てくれる予定にしていたが、ケイタイで電話して場所を変更してもいいだろう。
ハルコに少し早く出ると言っていたし、そろそろ潮時かもしれなかった。
「お作りしましょうか?」
彼女が、腰を浮かせようとした時。
あのウェイターが、側にひざまづくと彼女のグラスを取った。
いえ、私は。
もう帰るから。
そうつっぱねようと思ったのだが、水割りが余りに鮮やかに出来上がっていく様を見てしまって、まあ、一杯くらいはいいかしら、とリエは席に身体を預けた。
少し、心が弱くなっているのかもしれない。
今日は、披露宴や二次会にあるまじきことを、本当にいろいろ考えてしまった。
それで疲れたのだろう。
すんなりとスマートなことをしてくれる人を、いま彼女は求めているのかもしれない。
鋼南電気には、本当にそういう人が少ないから。
「番号は、お気に召さなかったみたいですね」
グラスを渡しながら、ウェイターが小さな声で言った。
そこで、あのフライドポテトの下のメモを思い出す。
今は、もうその皿は下げられてしまったので、確認することは出来ない。
リエは無言で、グラスに口をつけた。
口説かれるのがイヤだった―― と言えば、ウソになる。
誰だって、付き合うかどうかは別にして、男に『いい女』と思われるのは悪い気はしない。
しかも、本当に柔らかく紳士的に来られると、自分が高級な女性になったように感じたりもする。
ハルコはまだ、副社長の側で話している。
そろそろ、帰ろうかしら。
約束の時間は、7時だった。
この店の前まで、迎えに来てくれる予定にしていたが、ケイタイで電話して場所を変更してもいいだろう。
ハルコに少し早く出ると言っていたし、そろそろ潮時かもしれなかった。
「お作りしましょうか?」
彼女が、腰を浮かせようとした時。
あのウェイターが、側にひざまづくと彼女のグラスを取った。
いえ、私は。
もう帰るから。
そうつっぱねようと思ったのだが、水割りが余りに鮮やかに出来上がっていく様を見てしまって、まあ、一杯くらいはいいかしら、とリエは席に身体を預けた。
少し、心が弱くなっているのかもしれない。
今日は、披露宴や二次会にあるまじきことを、本当にいろいろ考えてしまった。
それで疲れたのだろう。
すんなりとスマートなことをしてくれる人を、いま彼女は求めているのかもしれない。
鋼南電気には、本当にそういう人が少ないから。
「番号は、お気に召さなかったみたいですね」
グラスを渡しながら、ウェイターが小さな声で言った。
そこで、あのフライドポテトの下のメモを思い出す。
今は、もうその皿は下げられてしまったので、確認することは出来ない。
リエは無言で、グラスに口をつけた。
口説かれるのがイヤだった―― と言えば、ウソになる。
誰だって、付き合うかどうかは別にして、男に『いい女』と思われるのは悪い気はしない。
しかも、本当に柔らかく紳士的に来られると、自分が高級な女性になったように感じたりもする。