冬うらら2
◎
「ごめんよ、ちょっと早くなって…意外と道が混んでなかったんだよ」
周囲の視線が、彼に注がれていることに、気づいていないのだろう。
少なくとも青年の目は、鋼南の秘書だけしか、視界に入れていないようだった。
もしかしたら、足元のウェイターの存在にさえ、気づいていないのかもしれない。
「でも、早く会えて嬉しいよ! 実を言うと、会いたくて会いたくてしょうがなかったんだ。あ、でも邪魔はしないよ。あと30分くらいだよね…終わるまで店の前で待ってるから!」
何と、素直な男なのか。
はっきりとしたしゃべり方で、大変聞き取りやすい声のおかげか、一言一句聞き漏らすことも、聞き間違うこともなかった。
みな、最初のショックがようやく抜けて、一様に戸惑っていた。
いきなり現れた存在が、一体リエとどういう関係なのか―― それが、気になってしょうがないらしい。
それも、当然だろう。
あの、高嶺の花のリエの前に、こんな男が現れたのだ。
ハルコでさえ、ちょっとびっくりした。
「ツバサ……あな…何てこと…」
リエの方は、しかしまだショックのさなかだった。
うまく言葉を切り出すことも出来ないように、唇をわなわなと震わせている。
このままでは、ここで痴話喧嘩を始めてしまいそうだ。
「ごめんよ、ちょっと早くなって…意外と道が混んでなかったんだよ」
周囲の視線が、彼に注がれていることに、気づいていないのだろう。
少なくとも青年の目は、鋼南の秘書だけしか、視界に入れていないようだった。
もしかしたら、足元のウェイターの存在にさえ、気づいていないのかもしれない。
「でも、早く会えて嬉しいよ! 実を言うと、会いたくて会いたくてしょうがなかったんだ。あ、でも邪魔はしないよ。あと30分くらいだよね…終わるまで店の前で待ってるから!」
何と、素直な男なのか。
はっきりとしたしゃべり方で、大変聞き取りやすい声のおかげか、一言一句聞き漏らすことも、聞き間違うこともなかった。
みな、最初のショックがようやく抜けて、一様に戸惑っていた。
いきなり現れた存在が、一体リエとどういう関係なのか―― それが、気になってしょうがないらしい。
それも、当然だろう。
あの、高嶺の花のリエの前に、こんな男が現れたのだ。
ハルコでさえ、ちょっとびっくりした。
「ツバサ……あな…何てこと…」
リエの方は、しかしまだショックのさなかだった。
うまく言葉を切り出すことも出来ないように、唇をわなわなと震わせている。
このままでは、ここで痴話喧嘩を始めてしまいそうだ。