冬うらら2

「か、帰るわ!」

 リエは、ばっと立ち上がった。

 逃げるのが一番だ。

 彼女が出ていけば、ここにツバサが存在する意味はなくなるのだ。

 まだ、会社でごまかしが利くかもしれない―― そう思ったのである。

「あ、ちょっと待ってリエ!」

 しかし、彼女が出ていきたい方には、ツバサが座っている。

 反対側には、ハルコが座っている。

 どちらかが立ち上がってくれなければ、リエはこの場を逃げられないのだ。

 何を、グズグズしているかと思えば。

「このコーラ、すぐ飲み終わるから、ちょっと待ってくれよ」

 悪気が、一切ない笑顔。

 ハイヒールで、蹴っ飛ばしてやればよかった。

 もう、こんな男にチョコレートなんてあげるもんですか!
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