冬うらら2
ωポテトチップス

 ツバサは、コーラの一気飲みは得意だった。

 リエが望むなら、1.5リットルボトルだって、一気して見せるだろう。

 今まで、彼女にそのリクエストをもらったことはなかったが。

 少し早い時間にも関わらず、帰ると言い出した彼女のために、ツバサはコーラの入っている大きめのグラスを傾けた。

 最初からついていたストローを取ると、そのままラッパ飲みで、ゴクゴクと喉を通す。

 炭酸が、口の中で山ほど弾ける感触があるが、それも彼には心地よかった。

 酒の席で、飲めない人が『ウーロン茶』を注文したりするが、その気持ちをツバサは理解できない。

 お茶には、ほとんど味がついていないではないか。

 まだ炭酸ジュースの方が、甘い味がしっかりついているので、何かをちゃんと飲んでいる気分が味わえる。

 飲み物談義は、脇に置いて。

 リエは、少々気が短い性格だ。

 それは、今までつきあってみて分かったことだった。

 そんな彼女が、『帰る』と言っているということは、『今すぐ帰る』ということとイコールで。

 だからツバサは、一気にこのコーラを片づけようとしたのである。

「ぷはっ!」

 最後の一滴までも飲み干し、彼は勢いよくグラスをテーブルに戻した。

 ガランガランと大きな氷が転がって、透明で不確かな塔を築き上げる。

 その氷に。

 彼女の姿が、反射した。

 ツバサが、視線をぱっと横に向けると、既にリエは怒っていた。

 もっと速く、一気飲みして欲しかったのかな?

 結構速く飲み干したつもりだが、彼女の理想はもっと高いようである。

 ますますツバサは、自分を鍛え上げて、似合う男になろうと決心した。

「それじゃあ!」

 これ以上、彼女が気分を害してはかわいそうだ。

 ツバサは、勢いよく立ち上がる。
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