冬うらら2
ω
「あら、まだいいじゃない…ほら、ポテトチップスも来たみたいよ…少しお話でもしましょう」

 リエの知り合いなのか、すごい美人が優しくしてくれる。

 最初にこの席に招待してくれて、コーラをご馳走してくれた人だ。

 さすが、リエの知り合いだな。

 ツバサは、満面の笑みを浮かべた。

 そして、ポテトチップスを見た―― 彼の大好物のスナックである。

 これとコーラがあれば、幸せな気分になれるのだ。

 しかし。

 チラ、とリエの方を見る。

 ここにツバサがいるためには、彼女が『帰る』と言った言葉を、撤回しなければならない。

 そっちの美人の発言で、行動を変える気になったかどうか、確認しようと思ったのだ。

「いえ、帰ります」

 眉間に深いシワをたたえ、言葉にはトゲを感じる。

 この会場で、どんなイヤなことがあったのだろうか。

 ツバサが、そう心配してしまうほどだった。

 約束の時間よりも、早く帰ろうと言い出すのだ。

 よほど、イヤなことがあったに違いない。

 そういえば。

 最初にツバサがここに来た時、ウェイターが彼女の側にひざまずいていた。

 ギリギリで気づいたので止まったが、うっかりつまずきそうだったので覚えている。

 あのウェイターと、何かあったのかな?

 ツバサセンサーが、ピコンピコンとランプを点滅させた。
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