冬うらら2

 残念ながら、開発の社員にはウケのいい女性ではない。

 常に、バカにされている気がするらしい。

 彼らの方にも、男としての劣等感があるのか、余計にそう感じるらしいが。

 確かに、ツンケンはしている。

 頭がよさげな態度を、絶対に崩さない。

 でも、プログラムは組めないでしょ!

 ハナの頭の良さの基準はそれだ。

 勿論、プログラムを組めるのは、最低条件に過ぎない。

 それから上は、遙か遠くにあるのだ。

 しかし、興味はあった。

 ああいうタイプの女性キャラが登場すると、ゲーム上では花にも毒にもなる。

 自分の周囲にいないだけに、じっくり一度煮詰めてみたかった。

 そんな彼女の、カレシが登場したというのである。

 どういう趣味をしているのか、一目見ておいて損はなかったのに。

 あんなデカイ声の男と。

 あの秘書様が、つき合っているというのだ。

 芸人?

 酔っぱらいハナの頭は、その職業がジュッと焼き付いてはなれなかった。

「くぅ…見たかったぁ…」

 ワンコの胸になついたまま、彼女はうなるように呟く。

「今日はついてないなぁ…ちぇー」

 せっかく、化粧まで気合い入れてきたのに。

 その化粧をしたのは、彼女自身ではなかったが。

 ウサを晴らすために、ハナは目の前のシャツにぐりぐりと顔を押しつけた。

「そか? オレは今日はめっちゃついてたで」

 などとフザケたことをワンコが言うので、ムカついた彼女は、さらにシャツに化粧を塗りつけたのだった。
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