冬うらら2
◎
うずっ。
ハルコの身体の中で、悪い病気がうずき始める。
いまにも始まりそうな恋を、遠巻きに温かく見守りたいというのに、いろいろ聞いてみたい感情が、ムクムクとわきあがってくるのだ。
今度、いつこの2人を見ることが出来るか分からない分―― そう、チャルメラの音楽を、聞いてしまった瞬間に似ている。
いま行かなければ、もうあの屋台はどこかへ消えてしまうのだ。
次に、いつ通りかかってくれるか分からない。
チャルメラの音楽に、ソウマが丼2つ持って駆けていったことを思い出して笑顔がおさえきれない。
夫に女性ファンがいたとしたら、その瞬間に幻滅しただろう。
いま、丼を持っているのはハルコだ。
チャルメラの屋台を引いているのは、ワンコの社長と、ヘバっているハナ嬢。
「大丈夫かしら? この後」
もうすぐ、お開きになりそうよ。
眠っているのか、ぼーっとしているのか分からない彼女のことを考えて、押さえた声で語りかけた。
いろんなものでコーティングして、当たり障りのないことを聞いてみたのだ。
「あ、せやな…」
支えている彼女に、視線を落とす。
その瞳の、愛しげ、かつ、不安そうなことと言ったら。
まあ。
ハルコは心騒いだ。
きっと、離れたくないと思っているに違いない。
「何だったら、私たちが彼女を家まで送り届けましょうか?」
責任を持って、お預かりして。
彼女の家がどこなのかは知らないが、タロウ氏の家よりも近くであることは間違いなかった。
彼は、ここよりもずっと、西の方に住んでいるのだから。
家の場所は、社員の誰かに聞けば、近いところまでは分かるだろうし、最悪、自宅に泊めて朝送っていってもいいのである。
うずっ。
ハルコの身体の中で、悪い病気がうずき始める。
いまにも始まりそうな恋を、遠巻きに温かく見守りたいというのに、いろいろ聞いてみたい感情が、ムクムクとわきあがってくるのだ。
今度、いつこの2人を見ることが出来るか分からない分―― そう、チャルメラの音楽を、聞いてしまった瞬間に似ている。
いま行かなければ、もうあの屋台はどこかへ消えてしまうのだ。
次に、いつ通りかかってくれるか分からない。
チャルメラの音楽に、ソウマが丼2つ持って駆けていったことを思い出して笑顔がおさえきれない。
夫に女性ファンがいたとしたら、その瞬間に幻滅しただろう。
いま、丼を持っているのはハルコだ。
チャルメラの屋台を引いているのは、ワンコの社長と、ヘバっているハナ嬢。
「大丈夫かしら? この後」
もうすぐ、お開きになりそうよ。
眠っているのか、ぼーっとしているのか分からない彼女のことを考えて、押さえた声で語りかけた。
いろんなものでコーティングして、当たり障りのないことを聞いてみたのだ。
「あ、せやな…」
支えている彼女に、視線を落とす。
その瞳の、愛しげ、かつ、不安そうなことと言ったら。
まあ。
ハルコは心騒いだ。
きっと、離れたくないと思っているに違いない。
「何だったら、私たちが彼女を家まで送り届けましょうか?」
責任を持って、お預かりして。
彼女の家がどこなのかは知らないが、タロウ氏の家よりも近くであることは間違いなかった。
彼は、ここよりもずっと、西の方に住んでいるのだから。
家の場所は、社員の誰かに聞けば、近いところまでは分かるだろうし、最悪、自宅に泊めて朝送っていってもいいのである。