冬うらら2

「アイスもろてきたでー」

 今度は、彼女にアイスを食べさせてやれる!

 タロウは、物凄くかなり思い切り、下心があった。

 さっきのイチゴ事件で、すっかり調子くれてしまったせいだ。

 このまま、どんどんハナと親密になっていこうと、期待して帰ってくると。

 彼女は、しっかり目を開けているではないか。

「あ、起きたんか?」

 心なしか、視線がうさんくさいものを見る目になっているような。

 さっきまでのとろける空気は、もうそこにはなかった。

 どないしたんや?

 と思っていると、彼女は席についたタロウから、アイスをひったくり食べ始めた。

 明らかに、違うことを考えながら食べているのが分かる―― 少し、乱暴な食べ方だ。

 スプーンで、皿をカシャカシャ言わせて。

「ああ、そない慌てて食べると…」

 タロウの心配は、少し遅かった。

「くぅ…」

 いきなり、ハナがこめかみを押さえる。

 アイスの逆襲にあってしまったのだ。

「ほら、言わんこっちゃ…」

 何気なく彼女に触れようとした時、それがパシッと払われる。

「言っとくけどね! 何かデキると思ったら大間違いだからね!」

 そんなに、軽い女じゃないんだから。

 な、何やぁ???

 突然の強硬な態度に、すっかり面食らってしまった。

 タロウがいない間に、一体何があったのか。

 そんなに、長い時間の不在ではなかったが。

 離れている間、ちらちらと彼女の方を気にしてはいたが、誰かが近づいていく気配もなかった。

 ということは。

 少しは酒が落ち着いてきた頭で、よからぬことを考えてしまったらしい。
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