冬うらら2

 何や。

 惚けながら、ハナを見る。

 何や…初々しいなぁ。

 普通は、こういうことは言わないものだ。

 たとえ下心があるように察知しても、きっぱりはっきり面と向かって突きつけるではなく、さりげなく逃げようとするものではないのか。

「何もせぇへんって…」

 タロウは、頭をかいた。

 初々しいのは嬉しいし楽しいが、バリケードを張られてしまうのはかなわない。

「遊び人は、みんなそういうんだから」

 アイスの残りを、またぱくぱくと食べ始めるハナ。

 あんまり早く食べたら―― 彼女は、また一度止まって顔をゆがめた。

 今度は、こめかみを押さえはしなかったが。

「ほんまやて」

 何かしたいのは、本当に山々なのだ。

 だが、出会ったその日に、おまけに相手が酔っている状態なのだ。

 それは『あかん!』くらい、タロウだって分かっている。

 急いで手を出して、運命の相手を失うようなハメには、なりたくなかったのである。

 しかし。

 手は出さないにせよ、どうにか今後のコンタクトを取るきっかけは欲しかった。

 このままでは、わざわざ平日に鋼南本社に出向いて、彼女を探さなければならない。

「な……ケータイ、教えてくれへん?」

 ハナのアイスが終わる頃に、ぼそっと聞いて見た。

 愛の救世主タロちゃんでも、かなり緊張しながらの一言だった。
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