冬うらら2

 今日のソウマの収穫は、何と言っても第一開発のチーフだったか。

 勿論、結婚式や披露宴の様子は別物である。

 あれと比較できるものなど、他には何もないのだから。

 社内のカイトの様子など、まず滅多に聞く機会などないソウマにしてみれば、チーフという身近なコネクションを得ることが出来て―― 今後とも、楽しみなところだった。

 お互いの情報を照らし合わせると、あちこち穴あきしていた部分が埋められて、かなり明確にあのワンマン社長の行動が浮き上がってくる。

 知れば知るほど、メイにメロメロなところが、くっきりはっきりとスポットライトを浴びるのだ。

 そんな検証をされていると知った日には、カイトの怒りは想像に難くないが。

 それに。

 チーフの話を聞くと、もう一度『BADIA』をやってみたくなった。

 あのマリアに、一体どのくらいのカイトのポリシーや気持ちがこもっているのか、見てみたいような気がしたのである。

 ゲームを見る目が、変わったというか。

 今までは、どこか子供のお遊び的な気持ちだった。

 しかし、ゲームの中に本当のカイトがいるらしい。

 その男にはまだ、ソウマは触れたことがないように思えたのだ。

 いや、あまり撫で回したいワケではないのだが。

 ただ。

 あの円盤の中に住むカイトの影を、追いかけている社員たちがいるのだ。

 BADとMARIAという言葉が、いっしょくたになった言葉―― 『BADIA』

 憎しみと愛が混ざり合って凝固した言葉だと、チーフは言った。

『社長は、愛の方は苦手そうですけどね…それは、ゲームを見れば分かります』

 と言われたことも、ソウマがやりたくなった一要因だ。

「どうしたの?」

 ウーロン茶を飲み終えようとしていた妻が、黙ったままのソウマに声をかけてきた。

「ハルコ…あのゲーム機はどこにしまったか覚えてるか?」
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