冬うらら2

「あいたたたた……」

 ハナは、ズシリと重く痛む頭を、ベッドから持ち上げることが出来ずにいた。

 これはもう、見事な二日酔いである。

 昨日の二次会で、どうやらしこたま飲んでしまったようだ。

「自業自得よ」

 気づけば、2号がそこにいた。

 二日酔いだと分かった途端に大爆笑してくれて、余計に彼女の頭痛をひどいものにしてくれたのだ。

「まったくもう…ジョウさんにまで迷惑をかけて」

 ひとしきり笑った後、ハナが昨夜そこらに脱ぎ捨てたであろうジャケットを、首をひねりながら拾い上げる。

 しかし、その口からは、聞き慣れない人の名前が出てきた。

「キズオ? 何で、そこにキズオが出てくんのよ!」

 キーン。

 しかし、自分の大きな声で、更に自分を苦しめてしまい、彼女は枕の中に再び顔を沈めた。

「何にも覚えてないの?」

 ビックリ。

 そんな声が返される。

 何もって。

 痛む頭で、ハナは昨日のことを思い出そうとした。

 確か、気合い入れて二次会に行って。

 コウノもコウノヅマもいなくて、ヤケになって―― うあ?

 しかし、彼女の記憶はそこで途切れていた。

 その後のことは、さっぱり思い出せないのだ。

「あんたは昨日……パトカーで帰ってきたのよ。お姉ちゃん怒ってるからね…覚悟しなさいよ」

 欠落した記憶が、とんでもないパーツで埋められる。

 勿論、ハナが思い出しているワケではない。

 見ず知らずのパーツを持たされて、必ずどこかにハメこみなさいと言われたのだ。


「ええー!!!!!」


 ズキーン!!!


 彼女の驚きは、彼女の苦痛。

 そのイコールに、まだ慣れることが出来ずに、たびたび穴の中に転がり落ちてしまうハナだった。
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