冬うらら2

 しかし、カイトの論点は違った。


「そんなセーターなんかじゃねぇ!!!」


 袖の辺りをつまんで、引っ張ろうとしたソウマの手を、彼は乱暴に払いのける。

 そして、怒鳴ったのだ。

 瞬間。

 ソウマとハルコが。

 いきなり、笑いをこらえきれないように、顔をそむけて口元を押さえたのだ。

 肩まで震わせているではないか。

 え? え?

 流れる空気を読みきれず、メイは呆然とする。

 カイトと2人の方を、キョロキョロと交互に見ながら、現状を把握しようとした。

「クソッ! 行くぞ!」

 こらえきれなくなったのか、カイトは、これ以上2人の前にいてたまるか、という強さで、再び彼女の手を掴むと引っ張り始める。

 引っ張られながら後ろを振り返ると、そこではハルコが手を振ってくれていた。

 ソウマはまだ、笑いから立ち直っていない。

 顔を前に戻すと、メイの視界には、白いセーターの背中。

 カイトの背中。

 どうして?―― そう、彼女は聞かなかった。

 分かったのだ。

 彼女の編んだセーターを、カイトが大事に思ってくれているということを。

 そうでなければ、南の島まで持って行こうなんて思うハズがない。

 それ以外の、翻訳なんて出来ない。
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