冬うらら2

 家もそんなに遠いワケじゃなかった。

 車で、1時間もかからないくらいで、帰ろうと思えば帰れるし、向こうから来ようと思えば来られる距離。

『親には紹介しておけ。でないと、お前じゃなくて彼女が困るんだぞ。今のままじゃ、お前にもし何かあった時、彼女はどこに連絡していいか分からないだろう?』

 真面目なような、ちょっと笑ったような声。

 不吉なことを言うな!

 とんでもない発言でも―― しかし、世間一般で言えば、確かにもっともなことだった。

 シュウが同居しているので、もし何かあった時は、ヤツに聞けば分かるだろうが。

 いや、そういう問題ではなかった。

 逆のパターンだってありえるのだ。

 いまは、めったに向こうの方からも連絡を入れてくることはないが、何かあったら絶対に電話をかけるだろう。

 その時に、メイが電話を取る。

 以下―― シミュレーション。

  メイ「はい、もしもし」

  カイト母「あら、あなたはどなた?」

  メイ「カイトの妻ですが」

  カイト母「はぁ? そんなまさか」

  メイ「いえ、本当ですが…あの、あなたは一体」

  カイト母「カイトの母です」

  メイ「ええー!!!!????」

 ―― シミュレーション終わり。


 なるほど、マズイ。

 わずかな時間の隙間で、そこまで考えたカイトは額に汗を浮かべた。

 自分はいいのだが、メイが気まずい思いをするのは間違いない。

 普通の両親だと自負している分、こういうことは報告しておかないと、後がうるさいのも予測できた。

 うー。

 どうして、この世の中はこんなに面倒なのか。
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