冬うらら2

 それを、本当に自分が手にする日が来ることさえ、想像だにできない。

 だから、想像の中の白いウェディングドレスの中身はからっぽだった。

 いや、のっぺらぼうではさすがに気持ちが悪いので、無意識に彼女の右脳は、どこかで見たような女優の顔とすげ替えてしまっていた。

 もう一度、ふぅと吐息をついて、彼女はダイニングの方へと戻った。

 お茶を置くなり。

 まだ、いろいろしゃべりたいことが山積みで、それを止められないかのようにハルコが話を続けようとする。

「カイト側の招待客は、シュウに任せておけば大丈夫だけど…あなたの方は、親戚とか、お友達とか呼びたい人がいたら、ピックアップしておいてね」

 そういえば、昨日落ち着いたら友人に、はがきを書こうと思っていたことを思い出す。

 親戚は。

「親戚は、遠くに離れている人が何人かいますけど、そんなに親しいつきあいはしていないので…」

 メイは、当たり障りのない言葉を選んだ。

 ハルコは、裏側に含まれているいろんなものをすぐに気づいてくれたのだろう、にこっと笑ってから、「それじゃあ、お友達だけね」と、すぐに話を切り替える。

「ああ! あと、近所の人を数人…その、よければ…ですけど」

 ハルコが用紙に何か書き留めているのを見て、慌てて思い出したことを口に出した。

 親戚よりも、近所の人たちには、本当に口では表せないほどのお世話になったのだ。

 魚屋さんの家族は、元気だろうか。
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