冬うらら2

「他には、そうねぇ…寒いから…編み物はどうかしら?」

 ぱっと。

 イワシと目が合った瞬間だった。

 どよーん。

 その目は濁っていて、メイの購買意欲をまったくそそらなかったが、彼女の言葉の方には、反射的に意識が動いた。

 編み物。

 それなら。

 編み物なら、やったことがある。

 学生時代は、ちょっとした恋心が働いたこともあるし、自分と父親のセーターを編んだこともあった。

 本さえあれば、完成させられるだろう。

 ミシンを必要とする洋裁なんかとは違って、材料は毛糸と編み棒だけだし。

 既に、彼女の心は魚売場から、編み物にジャンプしていた。

 そうして、迷うこともなくカイトのセーターを仮定して、いろいろ考えてしまったのだ。

 何色が似合うだろうか、とか。

 いろんなものと合わせやすくて、カイトに似合いそうな色。

 結果、白になったのだ。

「内緒にして驚かせてあげましょう」

 毛糸を買う時に、ハルコがウィンクをする。


 何だか、高校生に戻った気分だった。

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