冬うらら2
□18
「社長、すみません…ここなんですが」
午後10時。
カイトの意識は、かなり殺伐としていた。
たったいま、コンピュータ・トランスという、残業には都合のいい感覚が吹っ飛んでしまったからだ。
呼びかけられる、ほんの少し前に。
時計を見て、時間を確認する。
遅くなるというのは朝言ってきたが、こうしている間にも、彼女が寂しそうに一人で待っているのではないかと思うと、気が気ではない。
きっと、夕食も食べないで待っているのだ。
電話を。
先に食べて寝ろ、と電話を入れようと思った。
しかし、それを開発のチーフに封じられた。
椅子を回して振り返ると、書類を目の前に広げるのだ。
そして、細かいチェック項目などの、確認作業が始まってしまった。
「ああ」とか、「そうじゃねぇ」とか、「ちょっと貸せ!」とかやっている内に、時間がどんどん過ぎていく。
書類がとんとんと整えられる頃には、10時半になっていた。
「ああ、そう言えば…」
なのに、立ち去りかけたチーフは、ぴたっと足を止めて振り返ったのだ。
まだ、何かあるのかー!!!
イライラしている時は、たかがハエ一匹でも、機関銃乱射で仕留めたくなるものだ。
一刻でも早く、今日出来る限りのところまで仕事を進めて帰りたいカイトとしては、彼のおしゃべりに付き合っているヒマはない。
のだが、仕事に関係することは別だ。
たとえ、彼がガオガオと吠えようとも、それは踏みしだいてはいけないものだった。
「結婚されたって、本当ですか?」
なのに。
チーフは、彼の『仕事なら』という情状酌量に、まったくあてはまらないことを言い出したのだ。
ざっ。
騒然としていた開発室が、ぴたっと静かになった。
「社長、すみません…ここなんですが」
午後10時。
カイトの意識は、かなり殺伐としていた。
たったいま、コンピュータ・トランスという、残業には都合のいい感覚が吹っ飛んでしまったからだ。
呼びかけられる、ほんの少し前に。
時計を見て、時間を確認する。
遅くなるというのは朝言ってきたが、こうしている間にも、彼女が寂しそうに一人で待っているのではないかと思うと、気が気ではない。
きっと、夕食も食べないで待っているのだ。
電話を。
先に食べて寝ろ、と電話を入れようと思った。
しかし、それを開発のチーフに封じられた。
椅子を回して振り返ると、書類を目の前に広げるのだ。
そして、細かいチェック項目などの、確認作業が始まってしまった。
「ああ」とか、「そうじゃねぇ」とか、「ちょっと貸せ!」とかやっている内に、時間がどんどん過ぎていく。
書類がとんとんと整えられる頃には、10時半になっていた。
「ああ、そう言えば…」
なのに、立ち去りかけたチーフは、ぴたっと足を止めて振り返ったのだ。
まだ、何かあるのかー!!!
イライラしている時は、たかがハエ一匹でも、機関銃乱射で仕留めたくなるものだ。
一刻でも早く、今日出来る限りのところまで仕事を進めて帰りたいカイトとしては、彼のおしゃべりに付き合っているヒマはない。
のだが、仕事に関係することは別だ。
たとえ、彼がガオガオと吠えようとも、それは踏みしだいてはいけないものだった。
「結婚されたって、本当ですか?」
なのに。
チーフは、彼の『仕事なら』という情状酌量に、まったくあてはまらないことを言い出したのだ。
ざっ。
騒然としていた開発室が、ぴたっと静かになった。