冬うらら2

 絶対、帰ってくるというのは―― カイトが帰りたい以外の何物でもない。

 たとえ眠っているメイであったとしても、その身体を抱えて休みたかった。

『でも…あの……』

 納得しきれないような声だ。

「寝てろ…絶対だ」

 出迎えるな。

 そこまで言って、ようやく寂しそうな声のまま、『はい』と答えた。

 そんな声をさせてしまう自分が、やはり呪わしくなってしまう。

 よかれと思って言ってるのだが、うまく伝えることが出来ない。

『それじゃあ、夕食はダイニングの上の置いておくから…食べてね』

 メイからのお願いだった。

 彼女に要求を飲ませたのだ。

 自分だって、飲まなければならないだろう。

 せっかく用意してくれていた夕食だ。

 食べるとも。

「あぁ…」

 分かったと言って、そして電話を切った。

 ふぅ。

 中途半端に、声を聞くものじゃなかった。

 空腹なのを、思い出したのだ。

 いや、何か食べたいという空腹ではない―― メイという存在に対する空腹感に、いま襲われているのである。

「クソッ…」

 しかし、いまのカイトは囚われの身だ。

 魔王を倒さないと、家には帰れないのである。

 その悪人に立ち向かうべく、カイトは開発室に戻った。

 自分の椅子に座る。

 もう一つ。

 何か、ひっかかっていたのだが。

 カイトは、キーボードに指をかけながら眉を寄せた。

 自分は、何に引っかかっているのだろうか。

 脳のシグナルが、ちかっと金色に光った。


 あぁ???


 ―― 思い出した。
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