冬うらら2

 あの時も、編み物をしていたので電話に出るのが遅れたのだ。

 きっと、カイトに違いない。

 電話の音を聞いて、彼女は編み棒を持ったまま―― あの時は、ダイニングから飛び出した。

 編み棒には、編みかけのセーターがついている。

 そのセーターには、白い毛糸の玉がついてくるのだ。

 彼女の後ろで、落ちた毛玉がころっと転がったのを見て、慌てて戻って毛糸玉を拾い上げ、セーターをテーブルに置いて。

 いろいろしているうちに、コールが切れてしまった。

 うそ!

 誰もいないと思って、電話を切ったのだろうか。

 どうしよう。

 メイは、心配しながら電話のある玄関の方へと走ったのだった。

 しかし、電話はあきらめたワケではなく、シュウの手の中にあったのだ。

 話している内容の中に、『会社』という単語が聞こえて、相手がカイトであることは、はっきりと分かった。

 彼の方に近付きながらも、メイはどうやって代わってもらおうかと、言葉を探してしまった。

 シュウとは、まだちっとも交流を深めていないので、しゃべりづらいところがあったのだ。

 こんないきなり、カイトの妻におさまった彼女のことを、快く思っていないかもしれない。

 もしかしたら、電話も彼女宛ではなく、本当にシュウに仕事の話があってかけたのかも。

 いろいろ考えていると、彼がちらとこっちに見た。

 言葉を探し切るより先に、あっさりと受話器を渡されてしまったのである。

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