冬うらら2

 そして、メイは言いつけを破って夜更かしをしていた。

 普通のおとぎ話なら、この辺でオオカミに食べられてしまうところなのだが、運がよかったのか彼女は無事で。

 まず―― 慌てて編みかけのセーターと、セーターの本を隠さなければならなかった。

 毛糸も。

 内緒、なのだ。

 編み上げたら、びっくりするかな?

 ハルコの申し出に、彼女はちょっとそんなことを考えた。

 いまは、とにかく全部を紙袋に押し込めて、クローゼットを開ける。

 この中に、自分の服を置くエリアを作ってもらったのだ。

 といっても、単に半分ずつ使うことになっただけなので、仕切というものは何もないけれども。

 最初、いきなり自分のスーツなんかを、全部クローゼットから出そうとしたカイトに気づいて驚いて止めた。

 どうやら、彼はこのクローゼット丸々、メイに提供しようとしたのである。

 自分のスーツは、一体どこに入れる気だったのか。

 こんなに広いから半分だけでも多すぎるくらいなの、と必死の説得で、ようやく納得してくれた。

 そのカイトの触れないエリアの一番奥に、紙袋を押し込んだ。

 さあ。

 これで証拠は隠滅したので、お出迎えに。

 ドアの方に小走りで走りかけたメイは、ノブに手をかけて止まった。

 きゃー!!!!

 しまった、とそこで急停止。

 そうなのだ。

 出迎えるな、とも言いつけをされているのである。

 出迎えたら、いままで起きていましたと宣言するようなもので。

 疲れて帰ってきたカイトが、イヤな気分になってしまうかもしれない。

 メイは、くるりと回れ右をすると、ベッドにもぐりこんだ。

 それから、いつもカイトがそうするように、リモコンの全消灯のボタンを押す。

 要するに。

 タヌキ寝入りを決め込んだのである。

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