冬うらら2
□20
車をかっとばして家に帰り着く―― 深夜。
車庫入れして車を降りる。
小雨がパラついているのは、運転している時から知っていた。
冬の、冷たいイヤな雨だ。
それを振り切るように、カイトは玄関先まで走った。
玄関の明かりはついている。
彼は、電話で帰ってくると言ったのだから、ついていて当然だった。
けれども、いま彼が気にしているのは、明かりのことではない。
この扉を開ければ。
『おかえりなさい』
あの笑顔が、あるように思えた。
しかし、あれほど強く、『寝ろ』と念押しをしたのだ。
普通に考えたら、いるはずがない。
なのに気になるのは、本当はそこにいて欲しいという希望が、心のどこかにあるからだ。
彼は、緊張した指のまま、玄関のドアを開けた。
シーン。
予想通りというか、予想外と言うか。
とにかく、そこには誰もいなかった。
メイは、彼の言いつけを守ったのである。
少し待ったけれども、どこからも玄関に向かって駆けてくる音は聞こえない。
きっと、眠っているのだろう。
うー。
何て自分は、ワガママな生き物なのか。
笑顔がないと分かるや、どうしても見たくなるのだ。
いや、笑顔でなくてもいい。
とにかく、いま何よりもメイに会いたかった。
だから、用意してあるという夕食の方角ではなく、カイトは2階への階段を上がる。
まず、眠っているのを確認してから夕食をとったって、遅いことはないと自分に言い訳をしたのだ。
車をかっとばして家に帰り着く―― 深夜。
車庫入れして車を降りる。
小雨がパラついているのは、運転している時から知っていた。
冬の、冷たいイヤな雨だ。
それを振り切るように、カイトは玄関先まで走った。
玄関の明かりはついている。
彼は、電話で帰ってくると言ったのだから、ついていて当然だった。
けれども、いま彼が気にしているのは、明かりのことではない。
この扉を開ければ。
『おかえりなさい』
あの笑顔が、あるように思えた。
しかし、あれほど強く、『寝ろ』と念押しをしたのだ。
普通に考えたら、いるはずがない。
なのに気になるのは、本当はそこにいて欲しいという希望が、心のどこかにあるからだ。
彼は、緊張した指のまま、玄関のドアを開けた。
シーン。
予想通りというか、予想外と言うか。
とにかく、そこには誰もいなかった。
メイは、彼の言いつけを守ったのである。
少し待ったけれども、どこからも玄関に向かって駆けてくる音は聞こえない。
きっと、眠っているのだろう。
うー。
何て自分は、ワガママな生き物なのか。
笑顔がないと分かるや、どうしても見たくなるのだ。
いや、笑顔でなくてもいい。
とにかく、いま何よりもメイに会いたかった。
だから、用意してあるという夕食の方角ではなく、カイトは2階への階段を上がる。
まず、眠っているのを確認してから夕食をとったって、遅いことはないと自分に言い訳をしたのだ。