あの頃のあたし達

そんなこんなで花火大会の待ち合わせ時間になった。あたしは張り切りすぎて待ち合わせに一番乗りだった。


ぼーっと街いく人をみていると


「恵!」


遠くからあたしを呼ぶ声。見ると知哉が手をふりながらこっちに来た。


「宏明とかなは?」


「まだみたい。」


「そっか。」


それからあたし達はバイトのこととか話ながら二人を待っていた。知哉のバイト先はファミレスの厨房。あたしも料理が好きだから、その辺で気があっていた。

「お待たせ!」


しばらくするとかなと宏明が来た。


少し待ち合わせに遅れてきたかなは可愛く浴衣を着付けていて、とても似合っていた。


あたしは浴衣で来たかったけど、こういう時に限ってバイトが長引いてしまって、結局カジュアルなデニムファッションで来ていた。訳のわからない嫉妬なんだけど、かなが少しうらやましく思って自分が恥ずかしくなってあたしは俯いてしまった。



「かなの浴衣姿も可愛いけど、恵のデニム姿も俺好きだよ。」


あたしの気持ちが伝わったのか、知哉がそっと耳打ちしてくれた。


優しいな…。あたしは少しドキッとした。



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