レンタルビデオの女
返却されない「例の映画」、バイトに出勤しない彼女。
達也の中で、日に日に何ともいえない不安が募っていった。

「例の映画」。実は、達也はこの映画を見たことが1度もなかった。
これまでの1年間、ほぼ毎週借り続けていたにもかかわらず。

第1話でも話したように、この「例の映画」は達也が幸田さんに自分のことを認知し
てもらうための作戦用に借りていたものであり、達也自身、この映画には全く興味が
なかった。

タイトルは「Call Your Name」。

いつの時代にもある、ヒロインが難病にかかり、それを主人公の少年が必死に支える
ストーリー。
そして、ラストにヒロインの死が待っているというお涙ちょうだい系の王道の映画で
あり、3年前に大流行した映画だった。

達也はこの手の映画が昔から嫌いで、一切手をつけないのだが
幸田さんへのアピールに、なぜかこの映画を選んでしまった。

無意識の選択だった・・・。

それからも達也はレンタルビデオ屋に通い続けた。

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