亀村山町の不思議な出来事
「…ははは」
 蛙が甲羅を背負ったかのような早川さんは笑う。

 河童ってやせてて、口ばしあって、甲羅とお皿がついてるものだと絵本には描かれてた。でも、早川さん、かわいいカエル顔。愛嬌もあるし、馬なんて襲わないし。だから川で溺れたりするのかもしれない。

「蒔子さんすみませんね、濡れちゃったでしょ」

 そういえば、靴下がびしょ濡れで重たい。
「今日は天気が良いから帰るまでにきっと乾きますって」

 これからお昼だもの、暖かいから帰りつくまでに元通りになると思う。

 お昼? 
「あっ」

 そういえば、お腹すいた。

「じゃあお昼まだなんで、帰りますね」

 濡れた靴下を脱いで、素足を靴に入れた。なんだか、いつもと違って靴がごつごつする。それでも靴下をはいたままよりは、ましのはず。

「そうですか。ではまたこんど。あぁそうそう」

 鞄と大福を持って帰ろうとする私に、早川さんは言った。

「昼過ぎから雨になりますよ。その時お礼にキュウリを持っていきますね」
 早川さんもキュウリが好きだ。こっそり河原に土を入れてキュウリを植えているのを見たことがある。

「は~い」
 鞄を振り回して、早川さんに手を振っているつもり。でも、心の中ではとっても急いでいる。
 早くご飯食べたいな。
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