走り出せ、コスモス*



お母さんが出したお茶を飲んで、先生は手をひざで固く握った。

「沙枝さんとお付き合いさせていただいています、藤石康治です。」


先生…がんばれっ!


先生の声は少しふるえて

いつもより少し大きくて


自分たちのことなのに

無意識にそう思ってしまった。



「はい、聞いています」

お母さんが言った。


すると、突然先生は

座布団を下りて後ろに下がった。


お父さんもお母さんも私も

びっくりした。



え… 先生…!


まさかと思ったら、次の瞬間

先生は私の両親に頭を下げて言った。


「すみません!

私は塾の講師という立場でありながら、沙枝さんを好きになってしまいました。」


お母さんは頭を上げてと言ったけど、先生はそのまま続けた。


「その上ご両親に挨拶もしないままに、先日沙枝さんをうちにおいて

帰宅が遅くなってしまい
申し訳ありませんでした。」


先生……








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