走り出せ、コスモス*




「4月くらいに、沙枝が急にやせたことがありましたね。」

先生は顔を上げて、お父さんと目を合わせた。


「私達も心配していたんですが、どうすることもできませんでした。

しかしある日突然、私達に『ごめん』と謝って

食べるようになりました。


確かあれは

塾から帰ってきたときでしたね。」



……


… お父さん…



知らなかった

私のこと

よく見てくれてたんだ


お父さんはいつも

なんか…
私には興味ないみたいで

いや 大事にしてくれてるとは分かってたんだけど

でも

ちゃんと見てくれてたんだ…


「謝らないでください。

私達はあなたに感謝しています」


お父さんが

別人みたいに見えた



「沙枝には

あなたが必要だと思います。

こちらこそどうか
よろしくお願いします。」



びっくりして


心がじーんと

ふるえるような気もして


言葉が出なかった



先生を見ると、

唇を噛んで

一心にお父さんを見つめてた










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