走り出せ、コスモス*


「絵ってどんななの?」


板に貼り付ける作業がやっと終わり、

私は先生の顔を見るためだけに塾へ来た


こんなことができるのも付き合えたからだよね…

会いたいときに会いに来れるなんて… 幸せ…


「沙枝ちゃん、聞いてる?」

「あ、ごめん!

 鳥とかクジラとか…。空にいるものかな。」


「え? クジラって…空だっけ。」


「空も海も、ごっちゃになってるの。青龍だから。

 空も海も青いでしょ。」

ふふって笑うと、先生も笑って納得した。


「ふーん。俺も行こうかなぁ~。」


…。


……え!?



「だっ、ダメ!絶対ダメ!!」


「なんで?」


そりゃ、学校に先生が来るなんて

すごい 死ぬほど嬉しいけど…


「恥ずかしくて死んじゃうよ…」


「え?」


「一高体操…」



第一高校独自の準備運動は、超恥ずかしい逸品。

まあどこの学校のもすごいものだと思うけど…



「はは!なら絶対行かなきゃ!」


「え…えぇ!?」


「決めた!開会式から行くから!」

「ちょ、ちょっとぉ~」


先生は一高の6年前の卒業生だから、一高体操のひどさは知ってるはず。


一高体操はプログラム1番。

ついでに組体操が10番だから、どうにか説得して11番以降からにしてもらった。




先生が運動会に…。


想像していなかっただけに、ワクワクしてそわそわする。


運動会の前日楽しみで眠れないなんて、小学校3年生以来だ。





< 90 / 224 >

この作品をシェア

pagetop