悪魔のいる教室
「う、嘘つきで……」

「あぁ」

「こないだ職員室で、他の先生達と話してて……」

「あぁ」

「私、偶然……聞こえて……」

「なんて言ってた?」


僅かに低くなった声に、肩が小さく震えた。

それでも、苦しい喉を開き……声を振り絞った。


『佐久間はもう、俺の手の内だ。俺の事を信用してる』

タケティーが笑いながら自慢気に言ってた言葉を、涙に濡れた震える声で、私は口にした。


沈黙が落ちる。

辺りは不気味なくらい静かで、みんなに聞き耳をたてられてるような気さえした。


「……で?その後、お前はどうしたんだよ」


そう言った悪魔は怖いくらい冷静で。

まるで動じない口振りに、私は俯いたまま目を見開いた。


「……知ってたの……?」

「その話は後だ。先に答えろ」

「…………逃げた」


自分の情けない行動を曝した瞬間、悪魔は「はっ」と息を吐き出して笑った。


「あぁ。それでいい」


そう言って、ポケットの中に突っ込んでた手を、俯く私の頭に置いた。

まるで大人が小さい子供にするみたいに。


温かい、大きな感触に、いつの間にか止まってた涙がまた溢れ出す。

安心の涙だった。


悪魔は私の髪を軽く掻き混ぜると、またポケットに手を戻し、話し出した。
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