悪魔のいる教室
「中学ん時も……あいつに似てるセンコーがいた。たまにいんだよ。自分に忠実にさせるために、近づいてくるセンコーが。でも大体がすぐに諦める」


まるで他人事のように淡々と告げられる過去。

淡々とし過ぎてて、涙のせいで熱くなった頭はなかなか話に追いつかない。


「だから今回もそうなんだろうとは、なんとなく予想してた。別に、今さら驚かねぇ」


悪魔がどんな表情をしてんのかが気になって、私は少しだけ顔をあげて──


そして、目を丸くした。


「だからお前も、もういらねぇ心配すんな」


──この人は、微笑んでるつもりなんだろうか。

気づいてんのだろうか。
少しだけ、眉間に皺が寄ってる事に。

なのに口の片端をあげて、遠い目をして……なんとも呼べない、言うならば、不自然に歪んだ表情。


ムスッとしてる方がまだマシだった。

そうやって無理して、下手に笑おうとするから。


涙が……一気に溢れた。


声をあげて泣き出した私は、僅かに零れる街灯の灯りを完全に遮って、強く目を擦り続けた。

裾からはみ出たセーターはもう既にビショビショで、涙を拭ってんのか擦り付けてんのか、それすらわからない。


目の前に悪魔がいる事とか、周りに誰かいるかもしれないとか、もうそんなの気にして止められるレベルじゃなくて。

涙と嗚咽だけで精一杯で。


フワッと。

突然体を包み込んできた温もりに、私は驚き、首が痛くなるくらい俯いていた顔をあげた。
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