悪魔のいる教室
顔のパーツを置き去りにする勢いで隣を向くと──

綺麗な顔をキョトンとさせた、クラスの人気者がそこにいた。


「いい、い、五十嵐くん!」

「おはよ。熊谷さん、どうした?」


この人いつから隣にいたんだ!?


クスクス笑いながら窓の出っ張りに肘をつく五十嵐くんを注意深く観察する。

心臓はバクバクだ。


「い、五十嵐くんこそどうしたの? あ、朝練は?」

「あぁ。今日、体育館使えなくてさ。暇で、廊下歩いてたら熊谷さんみっけたんだよ」


そう言って微笑む彼は、窓から流れてくる爽やかな風が本当によく似合う。

とりあえず私も、曖昧ではあるけど微笑みを返した。


と、五十嵐くんはふと窓の外に目を向け、


「あ、サクマ──」

「ぎぇっ!?」


私は壊れたバイオリンのような悲鳴をあげ、咄嗟に窓の縁に身を隠した。


「熊谷さん?」と少々困惑気味の五十嵐くん。


けど今の私はそれに答える余裕なんかない。

血走った目で、登校中の生徒を1人1人チェックしていく。
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