悪魔のいる教室
──ドクン。

心臓が1回大きく揺れて、時間と一緒にピタリと止まった気がした。

廊下の騒めきとか、外から聞こえてくる会話とか、そういうのも全部。


暖かい朝日を浴びてんのに、体の奥底が冷えていく。


そう、例えるならば、冷たい水中に沈んでいく、そんな朦朧とした感覚。


同時に脳内を走馬灯のように駆け巡る、あの日の記憶。

鼻腔の奥を、あの甘い香りがかすめた気がした──……。


「……そんなわけ、ないじゃん」


そう笑い飛ばした私を、感情の読めない表情で見つめる読心術師。

朝日に反射した2つの瞳が、冷たく光る。


不意に、彼は口元を緩めた。


ゾクリ、と背筋が凍る。


「……でもさ」


……まただ。
また……目が笑ってない。


どうしよう。
体が、動かない。
< 117 / 201 >

この作品をシェア

pagetop