悪魔のいる教室
「ただのクラスメートにお金を渡したりなんて……普通しないよね?」


ほんの少しだけ私に顔を近づけ、吐息に微かに混ざるような声で囁く。


全身で感じる、さっきよりも近くなった彼の気配に、ザワザワと鳥肌がたった。


「……見て、たの……?」


私の問いかけにニッコリ微笑むと、ズボンのポケットから何かを取り出した。

──白いケータイ。


「よかったら、メアド交換しない?」

「え……?」

「嫌だったらいいんだ」


そんな……断れるわけ、ないじゃん。

きっと読心術師の五十嵐くんも、それくらいわかってるはず。


私はブレザーのポケットからケータイを取り出し、赤外線でメアドを送信した。


「じゃあ、今日メールするね」

「うん」


少しだけ重くなった気のするケータイをポケットにしまうと、「あ」という五十嵐くんの声が聞こえた。


顔を上げると、五十嵐くんは私の後ろを見てて。

私も後ろを振り返ろうとした。
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