悪魔のいる教室
しかも、絶対来ないであろうと思われた授業に。

……いや、むしろこの授業には出てほしくなかった。


「よしっ、じゃあ答え合わせするぞー」


その声に、視界の隅に映る物体がのっそりと起き上がる。


ドキッ。

慌てて黒板に意識を集中させた。


こんな時に限って教室は自棄に静かで、シャッシャッと、丸をつける音だけがあちこちから聞こえてくる。

心臓の音が悪魔に聞こえてしまうんじゃないか、ヒヤヒヤだ。


赤ペンを折ってしまいそうなくらい、強く握った。


……思ったんだけど。

どうして悪魔は数学をサボらないんだろう。


普通、自分を裏切った奴の顔なんか見たくないんじゃないかと思う。

私だったら、声だって聞きたくない。


悪魔は謎だ。

荒々しく感情を剥き出しにするくせに、何考えてんのかわかんない事が多い。


……あの事だって。

何を思って私にキスしたのか、全然わからない。


そうじゃないってわかってんのに、期待してしまう。


体の右半分にビリビリと意識的な痛みを感じながら、シャーペンを走らせた。

写した暗号は、僅かに震えてた。
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