悪魔のいる教室
悪魔に見られてんじゃないかって背中に意識を集中させながら廊下に繰り出した私は、とりあえず無難にトイレに向かう事にした。


もしかしたら、私が教室を出ていったのを見て涼子や由美が追い掛けてきてくれるんじゃないかって、少し期待した。


……なのに。


「おい」


背後から私を呼び止めたのは、数学のおっさんの次に聞きたくなかった声だった。


時計の秒針みたいにカク、カク、カクと振り返ると、思いっきり不機嫌な顔した佐久間隆斗様が私を見据えてらっしゃって。


「来い」


もう今朝みたいに『恥ずかしい……』なんぞ乙女モードに浸ってる余裕、なかった。

いや、むしろここは女を捨てて、泣き喚きながら全力で逃げるとこじゃなかろうか。


絶対そうだ。

なのに、石像になってしまったみたいに体が動かない。


悪魔は舌打ちして、1歩1歩こちらに近寄ってくる。


ヤバイよ……その目。

超殺気だってるよ!!
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