悪魔のいる教室
「お前ら、どっか行け」


悪魔はぶっきら棒に、一言だけ呟いた。

すると、誰一人文句も言わずゾロゾロと移動し始める。


私もさりげなくその中に混じってこの場を去りたい……そんな願いは、ガッチリと掴まれた左腕の痛みに打ち消された。


ふと、後ろからヤスくん達のひそひそ話が聞こえてきた。


「ヤス。あの人、誰?」

「んと、ひなたちゃん。リュウくんの彼女」


…………はいぃぃぃぃぃ!?


後ろを振り向くと、ヤスくん達はちょうど壁に隠れ見えなくなって、私はどうする事も出来なくて。


ちょっ、ちょっ、待って!!

か、彼女!?
誰が!? 誰の!?

なんでそんな──


「……どういうつもりだ」


パニック状態の思考は、鉛のように重くて低い声に押し潰された。


顔を上げる。


鋭い茶色の瞳が上から私を睨みつけてて……次に、薄い唇が目に入った。


ドクン、と胸が騒めき出すのと同時に、こないだの記憶が生々しくよみがえる。
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