悪魔のいる教室
「な……何が?」


唇から目線を逸らし、固くなった喉から声を振り絞ると、腕を掴む力が僅かに強まった。


思わず口から悲痛な声が洩れる。

すると、それに反応したかのように悪魔の手の力が弛んだ。


やっとの事で解放された腕を左手で撫でながら、私は顔をあげる。


「……なんで、あいつと仲良くなってんだよ」


眉を潜め、持ち前の凶器眼で私を見下ろした悪魔がそこにいた。


「……あいつ……?」

「しらばっくれんな」


ひぃっ!!


「も、もしかして、い、五十嵐くん……?」

「あぁ」

「なんでって……えっと……」


慎重に言葉を選びつつも、頭の中はクエスチョンマークの嵐だった。


……なんなの?

五十嵐くんと仲良くすんのはNG?

ってか、なんでそんな事で悪魔にキレられなきゃなんないの?

意味わかんないし……。


「朝、話し掛けられて……」


オドオドと口にした瞬間、悪魔の片眉がピクッと動いて。


「……話し掛けられただと?」


そう繰り返した声は、全身が震え上がるくらい低く、怒りに満ちていた。
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