悪魔のいる教室
手は、すごく温かくて。

身体中の血液が逆流してんじゃないかってくらい騒めきだす。


そのまま、手は滑るように移動していき──

耳の後ろ辺りで、止まった。


触れられてる部分から、ジ、ジジと、こそばゆい電流が伝わってくる。


目が、離せない。

視線が糸になってて、それを捕まえられてしまったみたいに。


悪魔の表情からは、感情が全く読み取れない。


もしかしてドキドキしてんのは、私だけ?

そんな事を考えていると、頭の天辺らへんの髪をクシャッと掻き混ぜられた。


「お前、髪ぺちゃんこ」


意地悪い笑顔で私を見下ろす。

片頬にだけ、小さなえくぼ。


悪魔は手を離して原チャリの鍵を回す。

静かだった駐車場に、再び機械的な一定リズムがこだまする。


「気ぃつけて帰れ」


私は呆然と立ち尽くしていた。

クシャクシャになってるであろう髪をそのままに、けたたましく震えながら発車した原チャリが見えなくなるまで、その場から動けなかった。


やっとのことで胸のドキドキが落ち着いてきたのは、夕陽が半分以上沈みかけた頃だった──……。
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