悪魔のいる教室
千代ちゃんは、私の前の席の子。

こっちを振り向いてにっこり微笑んでくれた千代ちゃんに、私もにへらと笑い返した。

……けども。

意識の全ては右隣に集中してる。

右半身はビリビリ痺れてて、その不快感に右腕を掻き毟りたくなる。


「前の席だと見にくいだろ。隣に見せてもらえ」


タケティー、私に恨みでもあるのかい?


『奈落の底へご招待』と脳内で変換された台詞に、私は首を細かく左右に降る。


「や、えっ、や」

「おーい、佐久間!」


うぉぉぉぉい!!
タケティー!!

それ以上は!!
頼むからそれ以上はマジでやめてくれ!!


「……んだよ」


隣から発されたダルそうな低い声。


ピシッ……と体が氷り漬けされたみたいに動かなくなった。

ひどく冷たい空気。


「お前、熊谷に教科書見せてやってくれ」

「あ?」

「教科書。あるんだろ?」

「なんで俺」

「隣の席じゃないか。ケチケチすんな! 人間いつだって助け合い、だろ?」
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