悪魔のいる教室
……なんて答えればいい?

タツ兄を傷つけずに済む返答を、ごちゃごちゃした脳内をまさぐって必死に探した。


「先生に見つかったら、ヤバイんじゃないかな……っては思う」


たどたどしく口籠もりながらタツ兄の顔色を伺う。


タツ兄は「あー……」と言って首を小さく縦に振りながら、広場の方に視線を流した。

さっきの悲しそうな目じゃなくて、ただ見てるって感じ。

そして再び私に向き直る。


「確かに、ヤベェな」


ニッと口の端を上げたタツ兄の顔を、役目を果たし始めた外灯が照らしていた。





「あっ!」


随分人影の少なくなった辺りに、弾けるような低い声が響き渡った。

同時に、あの派手な金髪を煌めかせながら笑顔で駆け出す人物。


「タツキくんっ!」


咄嗟に逃げ出そうとした私を金髪くんのカラッとした声が制す。

呼ばれたのは私じゃなくて、タツ兄。

……って、知り合い!?
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