チャイムが鳴る前に。
そもそも、柏原くんとあたしがこんな風に昼休みに会うのは、初めてではない。もう、3度目か4度目。
きっかけは、1ヶ月前。
『…あ』
席替え仕立ての席にまだまだ慣れないあたしは、消しゴムを落としてしまったのだった。
消しゴムは前の席の下にころころと転がっていき、円を描いたかとおもうと、止まった。
あーあ。また落としちゃったよ。数学なのに…。心の中で深いため息をついく。でも、そんなことしたって、消しゴムがこちらに浮いてくるわけでもないのだから、シャーペンを持つ手を握り直し、再び黒板に顔を向けた。