生徒会長様の、モテる法則
右京がとんでもないことを言いかけたので、とりあえず間合いを詰めてアッパーをしてやった。
「ほ、ほんま痛いわ…手加減しぃや」
彼はと言うと体を倒して涙目に顎を押さえている。
ちゃんとセリフを被せて自主規制してやったぞ、私グッジョブ。
「自業自得じゃボケ」
私はそう言って立ち上がり、スカートについた砂をバラバラと叩いた。
昼休みも、ソロソロ終わる時間だ。
「じゃ、また」
ハシゴを使わず、ジャンプして下に飛び降りる。
足を屈折させて上手く衝撃を和らげるようにしゃがみ込むと、上から声が降ってきた。
「あぁ、俺も行くさかい。待ちぃや」
対照的にハシゴに足をかけた右京を確認してから、空を見上げる。
先ほどより雲が厚くなっているようにも見えた。
雨が降りそうだ。
漸く地面に足をついた彼が私の隣に立ち、同じように空を仰いだのが見えて其方を見れば、いつの間にか前髪を留めていたゴムが無くなっていて少し短めのそれが額を隠している。
背も、意外に高い。
要冬真ほどではないが、175センチはありそうだ。
男のくせに、ビューラーで持ち上げたような睫毛が丸くなっている。
綺麗な顔をした男だ。
女連れ込んで『ピー(自主規制)』やるってんだから、モテるに違いない。
…、それって寒くない?
私が何となく彼を観察していると、その視線に気付いたのかこちらをチラリを見て、目を細めて笑った。
「あんま見つめんといて、欲情してまうやんか」
それは、目を細めて言うセリフではなかった。
向き直った右京は私の肩を掴むと、少し顔を落とす。
唯でさえ暗い空に、また闇がさしたようだった。
近付いた顔はやがて視界いっぱいに灰色が埋め尽くし、唇に甘く、温い他人の体温。
気付けば彼の短い前髪から丸くなった睫毛、筋の通った鼻にピンク色の唇が順番に目に入る。
「甘いのう」
ペロリと、自分の唇を舐め上げる赤い舌のいやらしさに我に返り、頭に血が昇った。
「ウルァァァァア!」