生徒会長様の、モテる法則
ねつあい?
「ねつあい?」
ねつあいって、熱愛?
周囲が遠巻きに私達を見ているのも気にせず、昨日出会ったばかりの男を見た。
「写真、こんなん貼られとったわ」
懐に手を入れ、細く長い指先に挟まった紙切れを取り出した右京を睨み付け、やや奪うようにそれを引き抜くと見慣れた風景が目に飛びこんでくる。
いつも行く屋上だ。
重たい鉛色の空、二人の男女、触れ合う唇、目を剥く私の表情。
「…、ん?」
私?
まるでドラマのワンシーンのような(と言ってもキャストの容姿は別物だが)情景。
「なにこれ」
驚きのあまり写真を持つ親指に力が入る。
なにより、恥ずかしい。
なんでこんなブツがあるのかという以前に、今度はパンツの色を誇張された挙げ句に言いふらされた気分だ。
「せやから、俺と鈴夏の濡れ場」
「…」
こいつ、殺そう。
そう、思った瞬間。
無意識に上がった右手を優しく掴まれた。
右京は、ニコニコ笑いながら私を制止している。
「こんなん公表されちゃあ、しゃあないわなぁ」
彼はわざとらしく、少し唸って考えるように首を傾げてから、掴んでいた私の右手首からスルスルと指先まで撫で上げ、手のひらを握りしめた。
俗に言う、恋人繋ぎというやつだ。
「付き合うか、俺ら」
見えない額が、不意に揺れた前髪で見え隠れする。
昨日結んでいた前髪の赤いゴムは、私の手から繋がる彼の手首で大人しくぶら下がっていた。
私が、その理不尽な流れに反論しようと口を開くと、腕に痛いほどの衝撃が走り、引かれたと思うと右京に繋がっていた指先は、いとも簡単に離れていき行き場を失った彼の手だけが残った。
「教室の前で、迷惑だ」
痛い。
不意に掴まれた右手首が。
「これはこれは、生徒会長さんやないですか」
方便が手伝って嫌みたらしさが増す、挑発するようなおどけた発言に要冬真は、あからさまに不機嫌に眉をひそめた。