生徒会長様の、モテる法則
「うちのクラス、コスプレレストランに決まったよ!聞いてなかったっしょー」
ハルは顔を上げて両手を腰に置いて、少しだけ眉をあげた。
辺りを見回せば皆立ち上がったり次の授業の準備をしたり、完全に一時間ボーっとしていたようだ。
「朝の写真のこと気にしてんのー?おれがキスしたら忘れる?」
グイッと私の机に両手をつけ顔を近付けてきた彼の額に全力でデコピンを食らわせてやれば、「じ、じょうだんなのにー」と言いながら痛みを両手で押さえて悶絶している。
まぁ、ハルなりに私を元気づけようとしているのだろうから、悪い気はしないが。
「桝古くんでは役不足ですわ!是非私と熱い接吻を!!」
「いえ!!遠慮します!!」
これまた突然現れた彩賀さんを一刀両断し、床に崩れ落ちる彼女を見ながら私は二つ前の席を盗み見るように目だけを動かした。
やっぱり、お礼は言わないとな…。
ゆっくり揺れる黒い髪、少し首を落として恐らく読書でもしているのだろう。
なんて言おう。
やっぱり、“助けてくれてありがとう”か?
よし、とりあえず…話しかけて…。
「二人に何したんですか、鈴夏さん」
なっんだよ!今意を決して一世一代の“ありがとう”を言いに行こうと立ち上がろとしたのに!
なんだ、私はヤツに話しかけちゃいけないのか!
「悪いけど!キスはしないよ!」
適当にあしらうような言葉を口にしながら振り返ると、赤い髪に綺麗な縁のメガネが目に入った。
「キス、してほしいんですか?」
「げ、久遠寺くん」
また一人変な人が増えた。
「朝から大変ですね、写真見ましたよ」
「ホント、色々誤解だよあれ。あ、そうだ久遠寺くん、星南右京ってどんな人?」
彼ならアイツの事が解るかと思ったが、久遠寺くんは珍しく顔をしかめた。
「女性をとっかえひっかえと言うのは、よく聞きます」
クラスも遠いからか、あまりよく知らない様子だ。
「星南右京、18歳A型」
聞き慣れぬ女性の声に私は驚いて顔をあげた。