生徒会長様の、モテる法則
「ナゼダァァァ!」
あれ、デジャブ?
「お、デジャブや」
「うお!」
私の逃げる場所は、やっぱり屋上だった。
扉を開けながら大声を上げると、見事にびしょ濡れのコンクリートと走る雨音。
階段を登りきった、屋上の扉がある小さな空間の隅に、男が座っている。
また、会ってしまった…!
気まずい。
右京はまた、赤いゴムで前髪を結んでいる。
授業をサボるなんて、なんて不良なんだと思ったがよく考えれば私も現段階でサボっているので文句も言えない。
仕方なく扉をしめ、手招きする右京を無視して階段の一番上の段に腰を下ろす。
「そんな離れんでもえぇやろ」
「これ以上近づいたら妊娠しそうなんで」
私が彼を見ずに右手首に触れると、傷付いたわぁと、さして傷付いていない口調でポツリと呟いた。
それから私には近付こうとせずその場で、彼は目を細めて笑う。
「で、今日はどうしんたん?」
目だけで右京を見ると、胡座をかいて上履きの紐を触りながらも此方をジッと見ている。
カウンセリングをするかの様な優しい声だ。
なにがあったというか…。
要冬真に見られて気が動転して、“ありがとう”って言おうとしたのに思わず、早口で弁解してしまった。
なんて言えない。
だって、それってまるでヤツのこと…。
「ふぅん、好きなんや。生徒会長んこと」
「好きじゃない!あんな男!心読むな!」
「読んでへんわ。自分、口に出しとったで」
最悪!!
私の叫び声が階段に響き、驚いて口を詰む。
あまりの失態に顎が外れそうになり、膝を抱え込むとその様子を見た右京が喉の奥で笑って壁に寄りかかった。
「なんで?生徒会長えぇやん。俺好きやで。男前やし」
「顔は整ってるかもしれないけど…すごい俺様じゃん」
私が右京を睨み付けると、彼は首を傾げた。
「ただの俺様でイケメンで財閥の金持ち息子が、あそこまでモテるかいな」