生徒会長様の、モテる法則
私の言葉は、もしかしたら雨の足音と傘に潰れる小さな音に消えてしまったのかもしれない。
右京は私を見下ろしたまま何も反論しようともせず、ただ雨の音だけを聞いているだけ。
「本当は、本当は…一緒に居たいとか自分に笑いかけて欲しいとか、触れてほしいとか!思ってるくせに…物分かりのいいフリして…!」
「鈴夏」
駄目押しというような、擦り切れた声に彼は戸惑ったような声をあげる。
「漫画の読み過ぎや」
違う!!
なんか思い付いた!みたいな顔して論点ずれた発言しやがって!
確かに漫画は読むけれども、ちょっと、過激?だったかもしれないけど、的を射る発言だと思うよ自分で言うのもなんだけどさ!
「でも、解ってるやん」
「はぇ?」
「人間て、欲張りでな。最初は本当に、笑っててくれたらえぇと思ったんよ」
傘を持ち直した手は少し雨に濡れている。
「単純なんは、最初だけや。どんどん難しぃなってな。どうしたらわからんくなって、もうフタするしかなくなってん」
右京の左手が伸びてきて、私の頬に触れた。
冷えた体が、彼の体温を奪っていく。
親指で目元がこすれていくのを肌で感じて、そこが熱く滲んだ。
「なんでお前が泣くん」
片隅で右京が少し笑った。
雨の音が煩い。
視界が脆く、笑った気がした、だけなのだが。
「泣いてない」
「お前、よーわかっとるやん。“好き”って事」
わからないよ。
「泣いた顔、かわえぇの。欲情してまうで、俺」
右京を見上げた瞬間、腕を控え目に引かれて気付けばまた雨の中だった。
額に当たった彼の肩はもう濡れている。
ゆっくり小さく吐き出された息が、少しだけ震えていた。
それでも泣けないで、やっぱりこの人は素直じゃない。
「泣かんといて、コーフンする」
なんて、嘘ばかり付くんだろう。
きっと彼女を忘れようと、何度ももがいたに違いないのに。
「代わりに泣いてんの」
そう言うと、右京は何も言わずに回した腕に力をこめた。