生徒会長様の、モテる法則
「あいつ!ドS番長!鬼畜で人を泣かせるの大好き☆な腐れ外道なんだよ~!!そんな相手に正面きってお礼をいいに?!無理無理!こっちから会いに行ったらまた体育倉庫だよ!あいつのことだから私を海に沈めながら喚く私を見下ろしてニヨニヨするよ!」
「…、同姓同名じゃねーの?桐蒲って雰囲気も柔らかいし、どっちかってーとMっぽいぞ」
「…。え?そうなの?」
「まぁ、数回しか話した事ないけどな」
そうかそうか安心安心…
「って違う!!!」
私が出した大声に、要冬真はビクリと肩を浮かして不審そうな目でこちらを見た。
広い部屋に、木霊した声に反応したのか、遠くで犬の鳴き声がする。
「お前の下品な大声のせいでジョセフが起きただろうが」
「ジョセフって誰」
「ゴールデンレトリーバー」
さっきの鳴き声か!
ってまた違う!
「ちょっと!あんた私の話スルーしないで聞いて!犬とか大好きだけど今は私!」
犬はいいから!
犬は大好きだけど、私の話を聞いて!
「犬、好きなのか」
えー!
食いつく所違うしー!
「ちょっと待ってろ」
要冬真は、そそくさと立ち上がり部屋から出て行った。
心なしか嬉しそうな顔をしていたが、気のせいだろうか。
つうか私の話聞いてくれないの!?
悲痛な叫びを!恐怖を!
ワン!
要冬真が出て行った扉がまた開いて、部屋に響いたのは私の叫びではなく、金色でモサモサの、可愛い動物、の鳴き声。
きゃー!
「可愛い!ピーター!」
「ジョセフだ馬鹿」
要冬真が突っ込んだけど無視。
遠くからでも分かる毛並みの良さと、柔らかそうな耳先。
流石金持ちの家に居る犬だわ!
金持ち犬!
扉を閉める音と私の声、それからピーターの尻尾を振る音。
ピーターはソファーの前にしゃがんだ私に向かって走ってきた。
歓迎したのが分かったようだ。
要冬真は後に続くように歩いて来てソファーに座り、ピーターに手を伸ばす。