生徒会長様の、モテる法則
撫でられたピーターが嬉しそうに目を細めた。
見上げる先には要冬真。
私はそんなピーターの視線を追うようにヤツを見上げた。
優しい表情。
それは、ヤツが海ちゃんを見る時の笑顔だ。
好きなものを見るときのその表情は、やっぱり信じられないほど柔らかい。
不覚にも見とれてしまい、ピーターに触ったまま固まっていると、名前を呼ばれた彼はソファーの上に飛び乗りヤツの膝の上でゆっくり横になる。
大きくて暖かそうな手が、またピーターの頭をゆっくり撫でた。
「…いいなぁ」
「は?」
ひー!
思わず声に出しちゃった!
不思議そうに此方を見下ろすヤツの視線を振り切るように立ち上がった私は、またソファーに腰を下ろしピーターの尻尾を撫でる。
――…いかんいかん、何羨ましがっている私
しかも、ピーターを。
なんだ私は犬になりたいってか!?
自分でもわからん!何がしたいんだ!
いやぁぁぁあ…考えれば考えるほどドツボにはまっていく。
私は、犬になりたい。
「なんだ、羨ましいのか?」
「いえ!全く!そんなやましい事は一切考えおりません!」
「ジョセフは俺様の膝以外乗らねーよ」
…さいですか。
変に勘ぐられなくてよかった。
ヤツはピーターの背中に手のひらを滑らせる。
しなやかな指先が不意に停止したので、不思議に思い私は顔を上げた。
「――…怖いのか、桐蒲葵が」
突然核心をつくような質問。
相変わらずピーターは膝の上で大人しくしているが、要冬真は真っ直ぐに此方を見つめている。
――怖い
あいつは私の全てを知って一番柔な部分を平気で押しつぶそうとするのだ、泣き顔が見たい、という下らない理由で。
「お前も人の子なんだな」
バカにしたような発言に、思わず手が出そうになったが次の瞬間、真面目な表情を見せたヤツに一瞬息を止めた。
「なんかあったら、俺が助けてやるから」
優しげな音が、喉の奥にゆっくり染み込んだ。