生徒会長様の、モテる法則
「やぁ、鈴」
休み時間、トイレに行こう一度開けた扉をまた閉める。
「大丈夫、今来た所」
女子トイレから出て来ると、まるでカップルのデートの待ち合わせのような空気を醸し出すヤツを無視して全力で教室へ。
そして放課後。
「へぇ、後夜祭のコンセプト“夏祭り”かぁ…、懐かしいね、金白祭りで射的の弾を鈴のコメカミにぶっ放したっけ」
「お前はカエレ!」
「何言ってんの、僕文化祭実行委員長だよ?」
「お前は…“長”の付く名のモノ全部やってんのか!」
「いやぁ、頼まれると断れない弱気な性格だからさ」
うそつき…!
自分の中の二面性を楽しむタイプの男に、それを罵った所で効果がないことは幼なじみの私がよーく知っている。
「葵!あんたの魂胆は丸見えよ!私が嫌がってんの楽しんでるだろ心の底から!!私だって立派な17ですからね、泣く子も黙るセブンティーン!」
生徒会室のソファーから立ち上がり、さも生徒会の一員かのように装う緩やかなパーマがかかる頭の天辺を睨み付けた。
向かいでずっと様子を窺っていたユキ君は相変わらず無言で私達を見守っている。
生徒会の集まりは、まぁ気付いている人が多いとは思うが一番乗りがユキ君、二番目私、そしてかなりの確率で三番目に要冬真がやってきて海ちゃんを探しに一度出ていく、ちなみにハルは私と一緒に来るか或いは一番最後で、久遠寺くんはフラリと現れるのだ。
そして今、私とユキ君と、何故か葵。
「僕さ、会えて嬉しいんだよ」
突然、悲劇のヒロインの如く眉尻を落として、しおらしい発言をした葵は目元を赤くして私を見上げた。
――…怖っ!私が居ない一年でまた恐ろしい技を…!
体の調子が悪くなり、ストンとソファーに腰を落とした。
「僕の事思い出すかなと思って体育倉庫に閉じ込めても感づきやしない、うっちゃんにキスさせても“ファーストキスは葵だったな”とか言う感じもない、あいつがバラしちゃったって言うからわざわざ会いに来たのに冷たくするしさ、鈴ひどいや」