生徒会長様の、モテる法則
こ…、これは…!
殺したい指数がアップしている…!
要冬真が“Mっぽい”って言ってたのはこれか。
確かに、今の雰囲気だとナヨナヨしいイメージはあるかもしれない。
涙を浮かべる悲しげな表情の裏は致死量を遥かに超えた猛毒まみれだというのに。
嗚呼言いふらしたい。
こいつの強すぎる喧嘩の実力も、悪行の数々も!
強さと鬼畜っぷりは恐らくコイツの父親由来。
容姿は母親由来。
そしてこの傲慢な性格は大人達から「坊ちゃん」と言われながら入れ墨を携えた兄貴達を従えていた結果だ。
出会った当初は、周囲からかなり怖がられていたものだ。
というか、授業参観に黒いスーツの裏の帝王のような父親が来たら誰だってビビると思うが。
「いやいや、猫被りしてもここでは意味ないし」
「いや、一応樫雪くん居るし」
「俺の事は気にしないで続けてください」
ユキ君…早々に戦線離脱…。
逃げる気だ。
か弱い先輩を助けるヒーローにはならないのかい君は!
「あ、鈴のクラスって民族衣装をテーマにしたレストランなんだ、“Weltreise”ね、ちなみに鈴は何着るの?」
「知らん。何気に日常会話にシフトすんな」
「僕、チャイナ服がいいなぁ」
「なんで」
「スリットから破って滅茶苦茶にしたいから」
お前なんか宇宙人に攫われればいいよ。
一足先に18歳になったからといって、18禁が許させると思うな若造!
私が無言で顔面に右ストレートを繰り出すと葵は軽々と顔だけで回避して、パチンと拳を優しく叩いた。
この至近距離で、避けられるとは…やっぱり私はこいつに勝てない。
こちとら鼻血吹かせてやる勢いだったのに。
「相変わらず動きが乱雑なんだよ鈴は。大振りすぎてすぐ見切れる」
少しだけ後ろに流れた髪を手櫛で一度元に戻し、そのまま自然に動かされた指先に私は一瞬見とれた。
勘違いしないでほしい。
こんなやつの容姿や小さな仕草にでは、ない。
飲んだ湯のみをテーブルに置く様な自然な動作で、葵は私の眉間を小突いた。